月経前症候群および月経前不快気分障害に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬
Selective serotonin reuptake inhibitors for premenstrual syndrome and premenstrual dysphoric disorder
Jespersen C, et al. — Cochrane Database Syst Rev, 2024
34 RCT 4,563人を統合した SSRI の最新メタ解析。継続投与の優位性を示す
主要な知見
SSRI は PMS/PMDD の全症状を moderate certainty で減少(SMD -0.57、95% CI -0.72 to -0.42)。継続投与(SMD -0.69)が黄体期投与(SMD -0.39)より有意に優位(P=0.03)。副作用は嘔気 NNTH 8、倦怠感 NNTH 9、性機能障害 NNTH 16、不眠 NNTH 18。
研究結果の概要

エビデンスの限界
採用 34 件中 23 件(68%)が製薬企業資金で publication bias の疑いあり。6 件で 20% 超の脱落、5 年超の長期安全性データは不足、欧米中心で日本人を含む RCT がほぼ無いため日本人女性での効果サイズ・副作用率が外挿になる。PMS と PMDD の効果差、思春期女性への適用は十分に検証されていない。
読者の方へ
上のグラフは、SSRI(脳内のセロトニンを増やす抗うつ薬)が PMS/PMDD の症状をどれくらい減らすかを、世界中の 34 件の比較試験 4,563 人のデータを統合して評価したコクラン・レビューの結果です。世界中の研究を集約した「最高水準のエビデンス」で、コクラン・レビューは複数の研究を統合した最も信頼性の高い分析手法に位置づけられます。 効果サイズは SMD -0.57 — これは「中程度の効果」を意味し、症状日記スコア(DRSP)で約 9 点の改善に相当します。さらに重要なのは投与法の比較で、毎日飲み続ける「継続投与」の効果(-0.69)は、月経前 14 日だけ飲む「黄体期投与」(-0.39)より有意に大きい(P=0.03)。「数日で効くから黄体期だけで十分」と思われがちですが、長期的には毎日飲む方が確実だということが世界で初めてはっきり数値化されました。 横棒(95% 信頼区間)は真の効果がほぼこの範囲に収まるという目安で、ゼロをまたいでいないので「偶然では説明できない差」だと判断できます。 副作用も無視できません。嘔気は 8 人に 1 人、倦怠感は 9 人に 1 人、性機能障害は 16 人に 1 人、不眠は 18 人に 1 人と、決して低くない頻度で出ます。ただし「服用 1-2 週間で慣れて軽快する」副作用も多いので、最初の数週間を乗り越えるかどうかが鍵になります。 あなたが「月経前のうつ・易怒・不安に悩んでいる」「漢方や生活改善を 2-3 ヶ月試したが手応えがない」なら、SSRI は次の選択肢として現実的です。「毎日飲むのは抵抗がある」なら、まず黄体期投与から始めて効果不十分なら継続投与に切り替えるのも選択肢。日本では PMS/PMDD への SSRI は保険適応外なので、精神科か婦人科で「うつ症状」「適応障害」として処方される実臨床が一般的です。「自分の症状日記 2 周期分を持参して、この論文の話を主治医にしたい」と伝えれば、診療がぐっと前進します。 限界として、採用研究の 68% が製薬企業資金で publication bias の疑いがあること、欧米中心で日本人を含む RCT が乏しいことが挙げられます。日本人女性での効果が完全に同じとは限りませんが、病態(アロプレグナノロン・セロトニン系)の人種差は小さいため、概ね同じ効果サイズが期待できると考えられています。3 ヶ月飲んで明確な改善がなければ、用量変更や薬剤切り替えを主治医に相談してください。
