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抗肥満薬革命——GLP-1を超える次世代薬の科学

体重が2割減る「痩せ薬」は、もう序章です。GLP-1の次に来る三重作動薬や飲む薬は、外科手術に迫る減量を実現しつつあります。次世代抗肥満薬の科学と、日本での現在地を現役医師が誠実に解説します。

2026-06-2932エビデンス 21
SR/MA ×2RCT ×16Case ×1GL ×2

はじめに——「痩せ薬」の話を、外来で落ち着いて

「先生、テレビでやってた“痩せる注射”って、本当に効くんですか」

ここ1〜2年、外来でこの質問が驚くほど増えました。GLP-1受容体作動薬——セマグルチド(オゼンピック、ウゴービ)やチルゼパチド(マンジャロ、ゼップバウンド)の名前を、患者さんのほうが先に口にすることも珍しくありません。SNSや週刊誌では「夢の痩せ薬」「ダイエット革命」という言葉が踊っています。

正直に言えば、医師の本音は少し複雑です。これらの薬が肥満治療を大きく変えたのは事実です。一方で、「魔法の薬」という売られ方には危うさも感じます。

そして、いま起きていることはもっと大きい。GLP-1はあくまで最初の一段でした。その上に、複数のホルモンを同時に操る薬、月に1回でいい注射、そして「飲む痩せ薬」が次々と登場し、最高で体重の約24%減——肥満手術に迫る数字を出し始めています [8][18]。

この記事では、煽りも安売りもせず、次世代の抗肥満薬がどこまで来ているのかを、世界の臨床試験データと日本での現在地から、できるだけ正直にお話しします。効果の大きさも、限界も、そして「日本で自分はいつ・いくらで使えるのか」も含めて。

食欲と代謝は、複数のホルモンの「会話」で決まる

なぜ「痩せ薬」が効くのか。その鍵は、私たちの腸と膵臓が出すホルモンにあります。

食事をすると、腸からはGLP-1GIPという2つの「インクレチン」が分泌されます。GLP-1(GLP-1: グルカゴン様ペプチド-1=食欲を抑え、胃の動きをゆっくりにし、インスリン分泌を助けるホルモン)は、脳の食欲中枢に「もう満腹だ」と伝え、胃から腸への食べ物の移動を遅らせます。GIP(GIP: 糖依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)も、インスリン分泌や脂肪の扱いに関わります。

さらに膵臓からはグルカゴン(血糖を上げる一方で、エネルギー消費=代謝を高めると考えられている働きもある)、そしてアミリン(食後に出て、満腹感を長く保つホルモン)が分泌されます。

私たちの「お腹が空いた/満たされた」「エネルギーを溜める/燃やす」という感覚は、これら複数のホルモンの会話によって、絶妙なバランスで決まっています。肥満では、この会話がうまく噛み合わなくなっています。

GLP-1・GIP・グルカゴン・アミリンの4つのホルモンが、脳・胃・膵臓・脂肪と全身のどこに作用するかを示す模式図
食欲と代謝は、GLP-1・GIP・グルカゴン・アミリンという複数のホルモンの「会話」で決まる。次世代薬は、この複数の声を同時に大きくする

GLP-1受容体作動薬(セマグルチドなど)は、この会話のうちGLP-1の声だけを大きくする薬でした。それでも体重は平均で約15%(試験により15〜17%)減り、画期的だったのです [23]。

では、もし複数のホルモンの声を同時に大きくしたら——? それが、次世代薬の発想です。

効果量の「階段」——単剤から多重標的へ

次世代薬の進化は、体重減少率の数字を「階段状」に押し上げてきました。すべて、糖尿病のない肥満の人を対象にした、おおむね1年半前後の臨床試験の数字です(いずれも偽薬群との比較で、最高用量)。

  • セマグルチド(GLP-1単剤、参考): 約15%減(試験により15〜17%) [23]
  • チルゼパチド(GIP/GLP-1のデュアル=2標的): 20.9%減 [1]
  • カグリセマ(アミリン+GLP-1): 20.4%減 [10]
  • レタトルチド(GIP/GLP-1/グルカゴンのトリプル=3標的): 24.2%減 [8]
  • アミクレチン(GLP-1+アミリンを1分子で): 24.3%減 [18]

つまり「狙うホルモンの数を増やすほど、よく効く」という、きれいな傾向が見えてきます。チルゼパチドは2標的で約21%、レタトルチドは3標的で約24%。かつては肥満手術でしか到達できなかったような減量幅に、薬が初めて手を伸ばし始めた——そう表現しても大げさではありません [23]。

主要な抗肥満薬の体重変化率を小さい順に並べた横棒グラフ。セマグルチド約15%からアミクレチン24.3%まで階段状に増加
狙うホルモンの数が増えるほど、減量効果は階段状に大きくなる(いずれも偽薬との比較・最高用量・48〜72週前後)

ただし数字の裏は、丁寧に読む必要があります。レタトルチドとアミクレチンの華々しい数字は、まだ早期〜中期の試験(少人数・短期間)のものです [8][18]。最終的な効果と安全性は、現在進行中の大規模試験で確定していきます。「24%」という数字は、まだ確定した約束ではありません。

標的の進化——2つ、そして3つの受容体へ

なぜ多重標的が効くのか。鍵は、ホルモンごとに痩せ方の仕組みが違う点にあります。

GLP-1とアミリンは主に「食欲を抑える」方向に働きます。一方、グルカゴンは少し毛色が違い、エネルギー消費(代謝)そのものを高める方向に働くと考えられています。レタトルチドが3標的で頭一つ抜けた減量を示したのは、「食べる量を減らす」だけでなく「燃やす量を増やす」という別ルートを足したからだ、と推定されています [8][23]。

1標的のGLP-1単剤から、2標的のGIP/GLP-1デュアル、3標的のトリプルアゴニストへと進化する段階図
単剤(GLP-1)→デュアル(GIP/GLP-1)→トリプル(グルカゴン追加)へ。標的を増やすほど「燃やす」ルートが加わる

ところが、ここに医学の面白い「謎」があります。GIPです。

チルゼパチドはGIP受容体を作動(オン)させて効果を出します。ところが、アムジェン社の新薬マリタイド(MariTide)は、GIP受容体を拮抗(オフ)させながら、同じくらいの減量(12〜16%減)を達成しました [12]。アクセルを踏んでも、ブレーキを踏んでも、同じ目的地に着く——。GIPが体の中で本当は何をしているのか、実は専門家の間でもまだ決着がついていません。これは「わかっていないこと」として、正直にお伝えしておきます。

チルゼパチドはGIPを作動、マリタイドはGIPを拮抗と正反対だが、いずれも体重を減らすことを示す対比図
チルゼパチドはGIPを「作動」、マリタイドは「拮抗」——正反対なのに、どちらも痩せる。GIPの役割はまだ謎

次世代パイプライン総覧——「注射」の進化

いま開発の最前線にある注射薬を、効果と特徴で整理します。

レタトルチド(GIP/GLP-1/グルカゴン トリプルアゴニスト) は、第2相試験で48週・最高用量で24.2%減、体重が15%以上減った人は83%にのぼりました [8]。複数試験をまとめた解析でも、血糖・血圧・ウエスト周囲径まで広く改善しています [9]。ただし、ここまでのデータは少人数・短期間のもの。現在、より大規模で長期の第3相試験で効果と安全性が検証されている段階で、最終的な数字はこれから確定していきます [9]。

カグリセマ(アミリン製剤カグリリンチド+セマグルチド) は、第3相REDEFINE 1で20.4%減 [10]。チルゼパチド級ではありますが、市場が期待していた「25%超」には届かず、やや期待を下回ったと評価されました。新薬は、事前の期待値が高すぎると「効いているのに失望される」ことがある——その典型例です。

マリタイド(月1回投与) は、先述のGIP拮抗+GLP-1作動という逆転の発想に加え、1か月に1回の注射で12〜16%減を示しました [12]。週1回でも負担に感じる人にとって、投与回数の少なさは大きな魅力になり得ます。

アミクレチン は、GLP-1とアミリンを1つの分子で同時に作動させる薬です。皮下注射の早期試験で、60mg・36週で24.3%減 [18]。動物実験では、食事量を大きく減らしつつエネルギー消費は保ち、脂肪肝も改善しました [19]。注目株ですが、まだ早期段階で、確定にはより大規模な試験が必要です。

このほか、肝臓病(MASH=代謝関連脂肪肝)も視野に入れたサバデュタイド(グルカゴン/GLP-1デュアル)なども開発が進んでいます [13]。

次世代抗肥満薬を承認済・第3相・第2相/早期相に分類したパイプライン総覧図
主要な次世代抗肥満薬の開発段階。多くはまだ日本未承認で、世界で先行している

経口革命——「飲む痩せ薬」の時代

次世代のもう一つの大きな波が、注射ではなく“飲む”薬です。注射への抵抗感がアクセスの壁になっていた人にとって、これは大きな転換点になります。

主役の一つがオルフォルグリプロン(経口の低分子GLP-1薬)。第3相試験では、2型糖尿病のある肥満の人で72週・最高用量9.6%減でした [15]。注射のチルゼパチドと比べると効果はやや控えめです(同じ糖尿病合併の人ではチルゼパチドが約15%、糖尿病のない人では約21%)が、1日1錠を飲むだけ・食事の制限も不要という手軽さが武器です。

日本人として知っておきたい背景があります。オルフォルグリプロンの創薬の出発点は、日本の中外製薬が見つけた化合物でした。それが導出され、米国で開発が進み、2026年4月に米国FDAで承認されています [15]。日本の基礎研究の種が、世界の「飲む痩せ薬」になって戻ってこようとしているわけです。

ペプチド型のGLP-1を高用量で飲めるようにした経口セマグルチドも進んでいます。第3相で25mg・約14%(13.6%)減 [16]、日本・韓国を含む東アジアの人を対象とした試験(50mg)でも14.3%減でした [17]。

週1回注射・月1回注射・毎日1錠の飲み薬という投与スタイルを代表薬とともに比較した図
週1回注射・月1回注射・毎日1錠の飲み薬へ。経口は効果がやや控えめな傾向だが、続けやすさが武器

日本ではどうなのか——承認・保険・薬価

ここが、日本の読者にとって一番知りたいところでしょう。「世界ではすごいことになっている。で、日本では?」

まず、日本でも保険で使える肥満症の薬は、すでにあります

  • ウゴービ®(セマグルチド): 2023年11月に薬価収載された、日本で初めて保険適用された肥満症のGLP-1薬です。対象は、BMI35以上で合併症が1つ以上、またはBMI27以上で高血圧・脂質異常症・2型糖尿病などの健康障害が2つ以上ある方など、条件が定められています。
  • ゼップバウンド®(チルゼパチド): 2024年12月に肥満症で承認され、2025年3月に保険適用が始まりました。BMI27以上+健康障害2つ以上、またはBMI35以上が要件です。
  • マンジャロ®(チルゼパチド): こちらは「2型糖尿病」の薬として承認されています(肥満症の適応はゼップバウンド®)。

そして大切なのが、「日本人にも効くのか」という問いです。これにはきちんとした答えがあります。日本人の肥満症の人を対象にした第3相試験(SURMOUNT-J)で、チルゼパチドは72週・最高用量で21.1%減(偽薬比較)。体重が5%以上減った人は96%にのぼりました [6]。欧米とほぼ同じ、しっかりした効果です。さらに日本人データを詳しく見ると、数値上は女性のほうが大きく減る傾向もありました(ただし、これは探索的な解析であり、確定した結論ではありません) [7]。

日本人肥満症患者でのチルゼパチドの体重変化を偽薬と比較した棒グラフ。15mgで21.1%減、10mgで16.1%減
日本人の肥満症でも、チルゼパチドは偽薬比で約21%減。欧米と同等のしっかりした効果(SURMOUNT-J)

一方で、正直にお伝えしなければならないことがあります。この記事で紹介したレタトルチド・カグリセマ・マリタイド・アミクレチン・サバデュタイド、そして飲み薬のオルフォルグリプロンは、2026年6月時点で、いずれも日本では未承認です。世界で先に進んでいる薬の多くは、日本ではまだ使えません。日本での承認時期や薬価は、現時点では未定で、確かなことは言えません。

参考までに、日本で実際に使える・開発中の薬を整理します(中立的な比較であり、特定製品の推奨ではありません)。

薬剤(販売名) 作用機序 投与経路・頻度 主な減量幅 開発・承認段階 日本での提供
ウゴービ®(セマグルチド) GLP-1単剤 週1回 皮下注射 約15% 承認済 保険適用済(2023-11収載)
ゼップバウンド®(チルゼパチド) GIP/GLP-1 デュアル 週1回 皮下注射 約21%(日本人 [6]) 承認済 保険適用済(2025-03)
レタトルチド GIP/GLP-1/グルカゴン トリプル 週1回 皮下注射 約24%(第2相 [8]) 第3相進行中 日本未承認
カグリセマ アミリン+GLP-1 週1回 皮下注射 約20%(第3相 [10]) 第3相 日本未承認
マリタイド GIP拮抗+GLP-1 月1回 皮下注射 約12〜16%(第2相 [12]) 第2相 日本未承認
アミクレチン GLP-1+アミリン(1分子) 週1回 皮下注射 約24%(早期相 [18]) 早期相 日本未承認
オルフォルグリプロン 経口 低分子GLP-1 毎日1錠(経口) 約10%(糖尿病合併 [15]) 米FDA承認・日本未承認 日本未承認
経口セマグルチド(高用量) 経口 GLP-1 毎日1錠(経口) 約14%([16][17]) 開発中(肥満用量) 肥満適応は日本未承認

なお、減量幅は試験ごとに対象・用量・期間が異なるため、単純な比較はできません。日本未承認薬を、個人輸入や自由診療で安易に使うことはおすすめしません。

ウゴービ・ゼップバウンドの肥満症での保険適用要件をBMIと合併症の数で示したフロー図
ウゴービ・ゼップバウンドの保険適用の目安。最終的な判断は医師が行う

光——そして、影

ここまで効果の話をしてきました。しかし誠実な医療のためには、「影」の部分こそ丁寧に語らなければなりません。次世代薬の課題は、大きく2つあります。

影その1:やめれば、戻る

最も大切な事実かもしれません。これらの薬は、やめると体重が戻ります。

セマグルチドの試験では、68週で17.3%減量した後、薬を中止して1年で、減った体重の約3分の2(11.6%ポイント)が戻りました(それでも正味では約5.6%の減量が残りました) [20]。チルゼパチドでも、いったん約21%減量した後に中止すると、52週で14%増加しました(継続した群は減量を維持) [4]。血圧や血糖などの改善も、多くが元に戻っていきます。

これは薬の欠点というより、肥満が「慢性疾患」であることの証明です。高血圧の薬をやめれば血圧が戻るのと同じで、肥満症の薬も「治ったらやめる」ものではなく、「コントロールを続ける」もの。痩せ薬は、ゴールテープではなく、伴走者なのです。

セマグルチドを中止すると減量した体重の約3分の2が戻ることを示す体重曲線。継続群は維持
薬をやめると体重の多くが戻る。肥満は「続けてコントロールする」慢性疾患(STEP 1延長)

影その2:減るのは脂肪だけではない

もう一つ、見落とされがちな「影」が、筋肉です。

急速に体重が減るとき、減るのは脂肪だけではありません。研究によれば、インクレチン薬による減量の25%以上が、除脂肪量(筋肉を含む脂肪以外の組織)から失われうるとされます [21]。あるレビューでは、薬による減量で除脂肪量が約10%(およそ6kg)減り、これは10年以上の加齢に相当する筋肉の喪失だと指摘されています [22]。

筋肉が減れば、将来のフレイル(虚弱)やサルコペニアのリスクが上がります。特に、もともと筋肉が落ちやすい高齢の方では、見過ごせない問題です。「ただ体重を減らす」のではなく、「脂肪を減らし、筋肉を守る」——次世代の課題は、減量の「量」から「質」へ移りつつあります。

同じ体重減でも、脂肪が減る良い減量と、筋肉まで減る注意が必要な減量を対比した図
同じ「○kg減」でも、脂肪が減るのと筋肉まで減るのは大違い。減量の「質」が次の課題

ここで、希望のある話を一つ。この筋肉の喪失は、ある程度防げます

監督下のレジスタンス運動(筋トレ)を10週間以上続けると、除脂肪量が約3kg増え、筋力が約25%向上したと報告されています [22]。つまり、「薬+筋トレ」が、これからの肥満治療の標準になっていく可能性が高い。薬で食欲を抑えながら、運動で筋肉を守る。さらに、筋肉を守る専用の薬(開発中)を組み合わせる未来も研究されています [21]。

これは、外来でなくても、ご家庭で今日から始められることです。「薬を使うなら、筋トレもセットで」。これだけは、ぜひ覚えて帰ってください。

薬で食欲を抑え、筋トレで筋肉を守る組み合わせを示す実践ガイド図
薬で食欲を抑え、筋トレで筋肉を守る。「薬+運動」が未来の肥満治療の標準になる

科学の現在地:わかっていること、まだわからないこと

わかってきたこと

  • 複数のホルモン受容体を同時に狙うほど、減量効果は大きくなる傾向がある(チルゼパチド約21%、レタトルチド約24%) [1][8]
  • 日本人の肥満症でも、チルゼパチドは欧米と同等の効果を示す [6]
  • チルゼパチドを3年続けた人では、2型糖尿病の新規発症が93%抑えられた(前糖尿病の肥満者で。減量がもたらす予防効果の一例) [2]
  • 薬を中止すると、体重の多くが戻る。肥満は継続的な管理が必要な慢性疾患である [4][20]
  • 急速な減量では筋肉も失われやすく、運動の併用が重要 [21][22]

まだわからないこと

  • レタトルチド・カグリセマ・マリタイド・アミクレチンの最終的な効果と長期安全性(多くが早期〜中期段階) [8][10][12][18]
  • GIP受容体を「作動」させても「拮抗」させても痩せる理由——GIPの本当の役割 [12]
  • 次世代薬の日本人専用データはほとんどなく、アジア人に最適な用量も未確定 [6]
  • 数十年単位で使い続けたときの影響、そして日本での薬価・アクセス

「24%減」という数字だけが独り歩きしがちですが、私たちはまだ、この薬たちの長い物語の序章を読んでいるにすぎません。

実践——次世代の「痩せ薬」と、どう向き合うか

最後に、現役医師として、いま私がお伝えしたいことを整理します。

  • 「魔法の薬」とは思わないでください。 効果は本物ですが、やめれば戻ります。使うなら「続ける」前提で、医師と相談しながら。
  • 使うなら、筋トレもセットで。 減るのは脂肪だけではありません。筋肉を守る運動を、薬と一緒に。
  • 日本で保険を使える人は限られています。 ウゴービ®・ゼップバウンド®には、BMIと合併症の要件があります。該当するか不安なら、自己判断せず医師に。
  • 未承認薬の個人輸入・安易な自由診療は勧めません。 レタトルチドやオルフォルグリプロンを「海外で話題だから」と安易に入手するのは、安全性・品質の面で危険があります。
  • 「痩せること」自体が目的ではありません。 目的は、健康に長く生きること。体重計の数字の先にある「質の高い体」を一緒に目指しましょう。

次世代の抗肥満薬は、間違いなく医療を変えていきます。でも、薬はあくまで強力な「道具」です。それを賢く、安全に使うための知識こそが、いちばんの味方になります。

おわりに——序章の、その先へ

肥満は、本人の「意志が弱いから」起きるのではありません。食欲と代謝を司るホルモンの精緻な仕組みが、現代の環境とうまく噛み合わなくなった結果です。だからこそ、その仕組みに働きかける薬が、これほど効くのです。

GLP-1は、その仕組みの扉を開けた最初の鍵でした。いま、2つ・3つの鍵を同時に回す薬や、飲むだけの薬が、外科手術に迫る減量を現実にしつつあります。一方で、「やめれば戻る」「筋肉も減る」という影も、はっきり見えてきました。

世界の最前線で起きていることを、煽らず、隠さず、外来の椅子に座ってお話しするように——。次に「痩せる注射って効くんですか?」と聞かれたとき、私はきっとこの記事の話を、もう少し落ち着いた声で、お返しできると思います。

なお、GLP-1受容体作動薬そのものが持つ心臓・腎臓・脳などへの多臓器保護作用については、GLP-1受容体作動薬の真実——肥満治療を超えた抗老化の可能性で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

Article Info
引用エビデンスSR/MA ×2RCT ×16Case ×1GL ×2

医学的レビュー日:2026-06-29

1

Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity肥満治療のための週1回チルゼパチド(SURMOUNT-1)

Jastreboff AM, Aronne LJ, Ahmad NN, et al. · N Engl J Med. 2022

詳細

2

Tirzepatide for Obesity Treatment and Diabetes Prevention肥満治療と糖尿病予防のためのチルゼパチド(SURMOUNT-1 3年延長)

Jastreboff AM, le Roux CW, Stefanski A, et al. · N Engl J Med. 2024

HR 0.07詳細

3

Tirzepatide once weekly for the treatment of obesity in people with type 2 diabetes (SURMOUNT-2)2型糖尿病を合併する肥満への週1回チルゼパチド(SURMOUNT-2)

Garvey WT, Frias JP, Jastreboff AM, et al. · Lancet. 2023

詳細

4

Continued Treatment With Tirzepatide for Maintenance of Weight Reduction in Adults With Obesity: The SURMOUNT-4 Randomized Clinical Trial肥満成人の減量維持のためのチルゼパチド継続治療(SURMOUNT-4)

Aronne LJ, Sattar N, Horn DB, et al. · JAMA. 2024

詳細

5

Tirzepatide for Weight Reduction in Chinese Adults With Obesity: The SURMOUNT-CN Randomized Clinical Trial中国人肥満成人の減量へのチルゼパチド(SURMOUNT-CN)

Zhao L, Cheng Z, Lu Y, et al. · JAMA. 2024

15mgで17.5%減詳細

6

Efficacy and safety of once-weekly tirzepatide in Japanese patients with obesity disease (SURMOUNT-J): a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled phase 3 trial日本人肥満症患者への週1回チルゼパチドの有効性と安全性(SURMOUNT-J)

Kadowaki T, Kiyosue A, Shingaki T, Oura T, Yokote K. · Lancet Diabetes Endocrinol. 2025

詳細

7

Association of baseline characteristics with clinical outcomes of tirzepatide treatment in Japanese patients with obesity disease (SURMOUNT-J subgroup analysis)日本人肥満症患者におけるチルゼパチド治療成績とベースライン特性の関連(SURMOUNT-Jサブ解析)

Yokote K, Fukushima Y, Shingaki T, Oura T, Ogawa W. · Diabetes Obes Metab. 2025

探索的詳細

8

Triple-Hormone-Receptor Agonist Retatrutide for Obesity - A Phase 2 Trial肥満への三重ホルモン受容体作動薬レタトルチド(第2相試験)

Jastreboff AM, Kaplan LM, Frías JP, et al. · N Engl J Med. 2023

詳細

9

Efficacy and safety of retatrutide, a novel GLP-1, GIP, and glucagon receptor agonist for obesity treatment: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials肥満治療へのレタトルチドの有効性と安全性:RCTの系統的レビューとメタ解析

Abdrabou Abouelmagd A, Abdelrehim AM, Bashir MN, et al. · Proc (Bayl Univ Med Cent). 2025

詳細

10

Coadministered Cagrilintide and Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity (REDEFINE 1)過体重・肥満成人へのカグリリンチドとセマグルチドの併用(REDEFINE 1)

Garvey WT, Blüher M, Osorto Contreras CK, et al. · N Engl J Med. 2025

詳細

11

Cagrilintide-Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity and Type 2 Diabetes (REDEFINE 2)過体重・肥満かつ2型糖尿病の成人へのカグリリンチド・セマグルチド(REDEFINE 2)

Davies MJ, Bajaj HS, Broholm C, et al. · N Engl J Med. 2025

詳細

12

Once-Monthly Maridebart Cafraglutide for the Treatment of Obesity - A Phase 2 Trial肥満治療のための月1回マリデバート・カフラグルチド(MariTide 第2相試験)

Jastreboff AM, Ryan DH, Bays HE, et al. · N Engl J Med. 2025

詳細

13

Efficacy, tolerability and pharmacokinetics of survodutide, a glucagon/glucagon-like peptide-1 receptor dual agonist, in cirrhosisグルカゴン/GLP-1デュアル作動薬サバデュタイドの肝硬変での有効性・忍容性・薬物動態(第1相)

Lawitz EJ, Fraessdorf M, Neff GW, et al. · J Hepatol. 2024

詳細

14

Safety and efficacy of the new, oral, small-molecule, GLP-1 receptor agonists orforglipron and danuglipron for the treatment of type 2 diabetes and obesity: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials経口低分子GLP-1受容体作動薬オルフォルグリプロン・ダヌグリプロンの2型糖尿病・肥満治療への安全性と有効性:RCTの系統的レビューとメタ解析

Karakasis P, Patoulias D, Pamporis K, et al. · Metabolism. 2023

詳細

15

Orforglipron, an oral small-molecule GLP-1 receptor agonist, for the treatment of obesity in people with type 2 diabetes (ATTAIN-2): a phase 3, double-blind, randomised, multicentre, placebo-controlled trial2型糖尿病を合併する肥満への経口低分子GLP-1オルフォルグリプロン(ATTAIN-2 第3相)

Horn DB, Ryan DH, Kis SG, et al. · Lancet. 2025

詳細

16

Oral Semaglutide at a Dose of 25 mg in Adults with Overweight or Obesity (OASIS 4)過体重・肥満成人への経口セマグルチド25mg(OASIS 4)

Wharton S, Lingvay I, Bogdanski P, et al. · N Engl J Med. 2025

詳細

17

Efficacy and safety of once-weekly tirzepatide in Japanese patients with obesity disease (SURMOUNT-J): a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled phase 3 trial日本人肥満症患者への週1回チルゼパチドの有効性と安全性(SURMOUNT-J)

Kadowaki T, Kiyosue A, Shingaki T, Oura T, Yokote K. · Lancet Diabetes Endocrinol. 2025

詳細

18

Amycretin, a novel, unimolecular GLP-1 and amylin receptor agonist administered subcutaneously: results from a phase 1b/2a randomised controlled study皮下投与する新規・単一分子GLP-1/アミリン受容体作動薬アミクレチン:第1b/2a相無作為化比較試験

Dahl K, Toubro S, Dey S, et al. · Lancet. 2025

詳細

19

The effect of amycretin, a unimolecular glucagon-like peptide-1 and amylin receptor agonist, on body weight and metabolic dysfunction in mice and rats単一分子GLP-1/アミリン受容体作動薬アミクレチンのマウス・ラットにおける体重・代謝異常への効果

Kuhre RE, Ballarín-González B, Brand CL, et al. · EBioMedicine. 2025

詳細

20

Weight regain and cardiometabolic effects after withdrawal of semaglutide: The STEP 1 trial extensionセマグルチド中止後の体重再増加と心血管代謝への影響(STEP 1試験延長)

Wilding JPH, Batterham RL, Davies M, et al. · Diabetes Obes Metab. 2022

詳細

21

The impact of weight loss on fat-free mass, muscle, bone and hematopoiesis health: Implications for emerging pharmacotherapies aiming at fat reduction and lean mass preservation減量が除脂肪量・筋・骨・造血に与える影響:脂肪減少と除脂肪量温存を目指す新規薬物療法への示唆

Stefanakis K, Kokkorakis M, Mantzoros CS. · Metabolism. 2024

詳細

22

Incretin-Based Weight Loss Pharmacotherapy: Can Resistance Exercise Optimize Changes in Body Composition?インクレチンに基づく減量薬物療法:レジスタンス運動は体組成の変化を最適化できるか

Locatelli JC, Costa JG, Haynes A, et al. · Diabetes Care. 2024

詳細

23

What is the pipeline for future medications for obesity?肥満に対する将来の治療薬のパイプラインはどうなっているか

Melson E, Ashraf U, Papamargaritis D, Davies MJ. · Int J Obes (Lond). 2024

詳細

24

Beyond weight loss: multisystem benefits of obesity medications減量を超えて:抗肥満薬の多系統へのベネフィット

Savas M, Kuckuck S, Boon MR, van Rossum EFC. · Lancet Diabetes Endocrinol. 2026

詳細

25

肥満症診療ガイドライン2022肥満症診療ガイドライン2022

日本肥満学会 · ライフサイエンス出版. 2022

詳細

26

肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント(2023年策定・2025年改訂)肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント

日本肥満学会 · 日本肥満学会. 2023

詳細

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監修医師
現役医師
現役医師。査読済みの一次文献に基づき、エビデンスベースの医療情報を監修しています。
専門分野
内科・予防医療・エビデンスベースドメディシン・ウイメンズヘルス・メンズヘルス
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査読済み一次文献に基づくエビデンスベース監修
エビデンスベース査読済み文献907件引用定期更新

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